A-170


男の子って乗り物が好きなものらしい。電車とか飛行機とか・・・。で、乗り物の王様といえば、車、特にスポーツカーとかバイクなのかな??ところが、僕の場合、全然興味がないわけじゃないけど、そんなに車に熱中した記憶がありません。F1も全然みないし。
ただ、こんな僕が唯一ハッとさせられたのが、メルセデスベンツ。初めて目にしたのは小学校2、3年だったと思う。車種とかは全然わからなかったし、それどころか「ベンツ」という名前すら知らなかったけど、すごく特別な車なんだと感じた。神戸の実家から歩いて30秒のところ、つまり同じ町内の隣のブロックに、「とってもコワい山口さん」系のお宅があって、休日になると、そのお宅の前にベンツがずらっと並ぶんです。たしかその中にBMWも数台混じってた記憶があるけど、当然そのころは、BMWもしらなかったので、「チェスの盤面みたいなマークがついてる車」と思っていました。その一大モーターショウの中でも、もとりわけ、淡いブルーのベンツは、少年の心にグイッとくい込んできたのでした。

時は流れて、京都での日々。emmyはパジェロだなんだといろいろ言ってたけど、ほとんど関心もなく、京都での7年間はひたすらママチャリで過ごしたのでした。
アリヤくん(ピアニスト)がカブの座席に88鍵のエレピを縛りつけ、その鍵盤の上にケツをのせて警官に尋問されている姿をみて、大くん(ベーシスト:Destiny / 股豪)が、家路へと向かう途中にガソリンが切れて、山科まで原付を押して帰ったという武勇伝を聞き、さらにはタンゲンくん(溺れたエビの検死報告書)が軽ワゴンの後部ハッチから颯爽と機材を運び出す姿を目撃して、「人力の限界」を悟りはじめた頃、横須賀へと転居。
「動けばいいや、荷物がたくさん積めればなおよし」くらいのつもりで買った中古の日産ウィングロード。で、実際に自分で車に乗るようになって分かったのが、メルセデスのデザインの素晴らしさ。
特にライトが丸目になってからのEクラスは本当に美しい。emmyも書いてるけど、確かにベンツには「おっさん臭さ」ってあると思う。ジャズを聴いて、目をつむって指をパチパチならしている俗物オヤジのイメージ。

ビートルズが大嫌いでした。でも実は、それはビートルズが嫌いなんじゃなくってビートルズが好きだって言っているヤツの雰囲気が嫌いなだけだった。ジャズは敬遠していました。でもそれは、ジャズを敬遠していたんじゃなくって、ジャズが好きだっていっているヤツを敬遠しているだけだった。
メルセデスも同じようなところがあるかもしれない。でも、俗物は放っておいて、要は自分自身が「優れたものを優れている」と素直に表現する、そして、それを発言するだけの自信と価値がある人間になればいいだけの話。と言いつつ、ビートルズはそれでもやっぱりあんまり好きじゃないけど・・・。

結局どうなったのか。emmyも書いているとおり、new A-classを買いました。E-classはとてもじゃないけど手が出ない。でも、A-classと同じくらいの値段で、ファミリータイプのミニバンとかワゴンにするよりは、ずっといい選択だったと思います。安易なところで手を打たずに筋を通したという感覚かな。いずれはCLSに乗りたいなと思ってます。だからといって「山口さん」の仲間に入れてもらおうなどとは思ってません。別の意味で「筋を通す」ことを求められてしまいますよね。